――戦場を抜けたあとに残ったもの
序章:もう出勤はできん身体になった
朝、目を覚ますと、窓の外が静かだ。
誰にも急かされない。
満員電車の時間も、無理やり詰め込まれた朝礼もない。
あの頃の俺が見たら、きっとこう言うやろな。
「なんやこの天国は」って。
けど実際には、天国でもなんでもない。
ただ、“普通の朝”がやっと手に入っただけ。
出勤しろと言われても、もう無理。
通勤って言葉が、今でもどこか“戦場の号令”に聞こえるから。
うん、ムリ。
第一章:リモートで取り戻した自分のペース
黒豆麦茶を淹れて、noshを温めて、パソコンの前に座る。
モニターの光も、空調の音も、すべて自分のリズムで動いてる。
“働く”って、本来こういうもんやったんやろな。
誰かの顔色をうかがって、オフィスの空気に合わせて動くんやのうて、
自分のペースで一番良い形を作る。
リモートは孤独って言う人も多いけど、
俺にとっては“呼吸ができる空間”だよ。
戦場では息継ぎひとつにも覚悟が要ったけど、
今はちゃんと息が吸える。
その違いが、生きる力になってる。
第二章:誰にも見えへん努力が積み重なってる
表から見たら、
ただモニターの前に座ってるだけのオッサンや。
けど裏では、Gitに記録されないほど以上の努力が山ほどある。
テストの設計、ログの追跡、誰にも見られへん修正と判断の連続。
ひとつのプルリクエストに、何十通りもの「どうすれば壊れないか」の想像が詰まってる。
Jiraのチケットを一つ片付けるたび、昔の癖が顔を出す。
“落とせば全員が終わる”っていう、あの頃の緊張がまだ身体に残ってる。
でも今は、その緊張を平和を守るための感覚として使えてる。
あの時の地獄を経験したからこそ、「誰も潰さない設計」ができるようになった。
終章:生きるように働く、それが俺の答えや
あの頃は、生きるために働いとった。
今は、働くことが“生きること”になってる。
会社も、肩書も、誰かの評価も関係ない。
今日もひとりでコードを書き、必要な分だけ話し、しっかり食べて、しっかり休む。
昔の俺が見たらきっと笑うやろな。
「お前、ようやく人間に戻ったやないか」って。
せや。やっと戻れたんや。
戦場を抜けて、自分の時間を取り戻して。
もう無理に戦わんでもええ。
“生きるように働く”──
それが、今の俺の答えや。



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